いびき発見伝~その4~『スタンディングオベーションの最初の人』

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例によって挿絵付き小説『いびき発見伝』のつづきです。文章は無理して読まなくていいので、最後のいびきのイラストだけでも観ていってくだち~!

過去の記事まとめ
いびき発見伝その1『いいんじゃないの~?』
いびき発見伝その2『えぇい、ままよ!』
いびき発見伝その3『なにも睨まなくたっていいじゃないか!』

4.スタンディングオベーションの最初の人

「よくぞ気付いて下さいました!あなたは何でも分かっちゃうんだなぁ!で、単刀直入にお聞きしますが...この子はその...おいくらですか?」

そうと決まるとがらりと態度を変えて、逆に私の方がヘイコラと店主の様子を恐る恐る伺う体たらくになってしまった。そんな私の質問に店主はグイっと顔を近づけてきてニヤッと笑ってからこう言った。

「私がいつ売ると言いましたか?お金なんかいりません!どうぞお迎えしてくだせぇ~な旦那!」

「えっ!じゃあタダで譲って下さるってことですか?いや、これは一体どういう風の吹き回しで?何か事情があるのではないですか?」

私の声が大きかったのか店主の後ろのサルがキーキー喚きだしたので、店主はポケットから餌を取り出してサルに与えはじめた。サルはすぐに泣き止んで餌のバナナを夢中で齧り続けていた。

「事情も事情、大事情ですよ!旦那にだけはお話しますがね、この子は今朝うちの店の玄関前に言葉通り捨てられたいたんですよ!うん、本当に捨てられていたんだ!段ポールに入れられていて、一応バスタオルで包まれてはいたが、私はてっきり捨て子だと思いましたよ。だってね、旦那、見るからに幼い子供じゃないですか!人間の子供が捨てられているだなんて、そんな物騒な世界に生きているだなんて思ってもみないですよ。もちろんニュースではコインロッカーに赤子を捨てる親なんかが報じられていますがな...テレビの前の人間はそんなの本気にはしませんさね。旦那だってそうでしょう?誰もこんな物騒で暗い世の中に住んでいるなんて思いたくありませんからね!どうせ自分には関係ないと思っているし、どこか外国か異世界の出来事かなんかだと無関心なんだ。近くで火事があったってうちにまでは及ばないと決め込んでる。そのくせ野次馬には顔を出すんだから、世の中の不幸を見世物か何かだと思ってるんでさ。私もそうだし、旦那だってきっとそうでしょう?」

「いや、うんそうかもしれませんけど...一体何の話ですか?あなたは全然全く関係のない話をしているよ!この子が捨てられてて、それでどうしたんです?」

また後ろのサルが泣き始めた。店主は満面の笑みで「よーしよしよし」と餌をあげてサルを落ち着かせた。見たところ本当に動物が好きなようだった。

「そうなんです。この子が段ボールの中でバスタオルに包まれてましてね。周りに誰もいないのを見てとるとすぐさまこの子を店の中に連れて行きましたよ。店内の明かりの下でこのバスタオルをとると、あれまあ可愛らしい女の子じゃないですか!私はまるで竹取の翁にでもなった気分でしたよ。ブロンドの髪は神々しく輝いて、エメラルドグリーンの瞳は透き通るようで私の事を見つめているではありませんか!しかし、やはり妙なのがこの子についている長く垂れた耳とフワフワの尻尾ですな。これは作り物じゃあございません。正真正銘この子から生えとるもんでさ!旦那はこの子をどうお思いですか?」

「どうというと?」

「人間だと思いますか?それとも何か実験で生まれた別種の生き物だと・・・」

それは極めて確信をついた質問だった。そう改まって聞かれると私には何も明確な答えを出せる自信がなかった。というより、たとえ答えがあるにしろ、仮にこの子を人間だと断じたらこの子を貰ってもいいものなのか分からなかった。この子が人間だとして、例えば某有名日常系漫画の『よ〇ばと』のように勝手に連れて帰って一緒に住まわしていいものなのか。自分の事を『とうちゃん』とか呼ばせてみたとして、それは明らかに”略取誘拐罪”とか”拉致監禁”とかレッテルを張られる類のものであって、現実的にはありえない、漫画の世界だけの話だった。

ではこの子を人間ではない別種の動物だとしたら?それでもひな型に人間という種族が混じっていることは見た目からも明確な事実のように思えた。子宮の段階で抽出されて、何か細胞をいじられて、犬かなにの遺伝子を組み込まれて・・・といったSFちっくな、しかし現代の科学でなら十分ありえそうな類の生き物が目の前にいるのだ。この子が人間であれ動物人間であれ、何であれ、店主の質問はわたしに”お迎え”の選択肢を与えないものだった。倫理的に完全に私はこの子をお迎え出来ないことが事実だった。

「ちょっと意地悪な質問をしてしまいましたかな?」

私が返答に困っていると店主は後ろのサルを籠から出して手に乗せて愛撫し始めた。

「この子(サル)はインドネシアで見つかった新種のサルでしてね。うちには絶滅危惧種のサルも何匹かおりますが、この子はどうやら全くの新種らしいでさ。まあ、何で私が持ってるかっていうと連れて帰ったんでさ。インドネシアに行ったときにスーツケースに入れてね。それはもう可愛かったからね!一目惚れでさ!それ以外に理由がありますか?何かを手に入れることに!私はこの店をもちろん生きるためにやってますよ。でもね旦那。絶対に好きなものには1円たりとも値段は付けないたちなんでさ。この子は売り物なんかじゃあないってね!だから、この子に相応しいと思った人が見つかれば、私は喜んでその人に譲ってあげるつもりです!お金なんか取らない。ふさわしいご主人のもとへ帰してやる気持ちですな。」

店主は何か物思いにふけるように優しくサルを撫でてから籠に戻した。

「そこへきて私がこの子に相応しい主人だと?」

「ええ!そうです!ぜひお迎えしてくだせぇな!」

と言って店主は私に抱きつかんばかりに迫ってきたのを、咄嗟に手で制止した。

「いや、待ってください!そう言って下さるのはありがたいですけど、貰われたほうはどうするんです!人間なのか何なのかも分からない生き物を譲り受けて、警察に捕まったらどうするんですか!」

「そのことでしたらご安心を!安心キットをお付けしますから!」

「何ですかその『安心キット』って!?」

いつの間にか店主の表情には怪しい影が浮かんでいた。同じ微笑でも内に秘めた思惑一つでなんと印象が変わることだろう!やっぱりこいつは古狸だったのか!

「この子が人間だろうと動物だろうと関係ございません!お渡しする『安心キット』に戸籍登録に必要な書類とその方法が書いてありますから、それで晴れて合法的に一緒に暮らせるってわけでさ。」

「どこで生まれたかも分からないのに出来るわけないでしょう!あなたはあれだ!この厄介な生き物を僕に押し付けようとしているんだ!捕まるのが怖いから!そうでしょう!」

「それは違いますよ旦那!さっきも言ったでしょう。この子に相応しいご主人にお迎えしていただきたいって!だからこの子の対価は1円たりともいただきません!ただその・・・この『安心キット』は100万でございますんで、それだけお支払い頂きたく存じますです、はい。」

「クソッ!!!ガッ!!!」

私は腹立ち紛れに足元の籠を蹴飛ばした。すると周りの鳥獣が泣き出して暴れはじめた。

「あまり動物を刺激しないで下さい旦那!この子も怖がってるじゃないですか!」

「これが落ち着いていられるかってんだよ!善人面して近寄ってやっぱり高額な金額を押し付けようとしているんじゃないか!なんだってそんな高いんだ!その『安心キット』ってやつは!いくらなんでも人を馬鹿にし過ぎているよあなたは!」

また癇癪紛れに足元の籠を蹴飛ばそうと思ったが、そこでかのプリティーアニマルと目が合ってハッとした。そして私に向かってあたかもこう言っているようだった。「じゃあワタシはいったいいくらだと思って?旦那さま?」

この子を手に入れることに100万円が一体なんだろう?そもそもこの子に対価を求めること自体がナンセンスなのだ...いやいやいや!この子に1円たりとも付いていないからと言って、結局安心キットで100万円付いてるじゃないか!こんなの携帯電話の高額な料金設定と何ら変わらないじゃないか。0円とかいって結局オプションやら何やらで1万円くらいとるんじゃないかよ。通信なんか機械が勝手にやってるだけじゃないか。貧乏人から毎月1万円もせしめやがってクソが!

するとまた私のクァイィ(可愛い)お嬢さんが円らな瞳で私にこう語りかけてくるのだった。「たしかに100万は高額です。でもこれから訪れる私と旦那様との愛しい同棲生活を思えば、100万が一体なんだというんです?そんなもの、ただの可愛いものに対する税金だと思って諦めてしまいなさい!その100万円はこの古だぬきに払うのではない!旦那様の私に向けられた愛に対する税金なのです!さあ!悩んでいる暇はありません!早く私をこの古だぬきから救い出して下さいませ!」

カチン!☆彡

完全にこの子をお迎えする算段にスイッチが入ってしまった。そうと決まれば話は早い。交渉成立だ!こういうのは気が変わる前に手続きを済ませてしまうに限る。何食わぬ顔でお迎えする方向に話を持っていかなければいけない。一度深呼吸をしてから話に戻った。

「まあなんだ。100万円というのもこの子をお迎えするための安心を買う様なものですよね。うん、まったく私も大人げなかった。すみません。」

するとどうだろう。店主はニヤリと微笑を浮かべるとゆっくりと、そして相手に敬意を表すかのようにパチパチパチと拍手をフェイドインさせた。それは大演説の後の静寂の中はじまるスタンディングオベーションのそれであった。

「旦那様。合格です。」

「はい?」

「旦那のこの子に対する愛を試させていただきました。安心キット100万円というのは嘘でございます。旦那からはびた一文いただきませんさね。さあ、大旦那様!お迎えくださいませ!」

何が起こったのか分からずキョトンとしていると、店主は後ろポケットから鍵の束を取り出し、錠を外した。そして、籠から出てきた『その子』はこうなる結末を最初から分かっていたかのように、真っ直ぐな視線で私を見つめて「お待たせいたしました、旦那様。一緒に帰りましょう。」と言ってほほ笑んだのだった。

今になって思えばとんだ茶番に付き合わされたものだ。なんだってこんな回りくどい小芝居を打たないといけなかったのか。それはおそらく客のいない暇な店の暇な店主の軽い悪ふざけだったのかもしれない。きっと一度でいいからやってみたかったのだろう。「合格です」ってやつを!

   

つづく・・・

  (;´∀`)アハハハ

気になる二人の契りは次回!ということで( `ー´)ノ

あとがき

とまあ、そんなこんなで、ようやく”その4”まで来ました!気まぐれで始まった当小説ですが、まだまだ続くのです!キリがいいので、これをもって第一章とさせていただきます。


オリジナルイラストもこういう感じでストーリーが背景にあると描きやすいなと思いました。何のコンセプトもなく、ただ漠然と可愛い絵が描きたい!みたいな感じだと中々描けませんでしたが。しかし、描けるかわりに、1話につき1枚という遅筆さ・・・(-_-;)まあ、ラフ画なんかは描いてるしいいか(^^♪
私には1枚1枚音楽やラジオ聴きながらゆっくり描いてる方が楽しいのだ!

というわけでまた次回!

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