いびき発見伝~その3~『なにも睨まなくたっていいじゃないか!』

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随分と間が開いてしまいましたが、挿絵付き小説の続きです。例によって読むの面倒だと思うのでイラストだけでも見ていってくだち~!

過去の記事まとめ
いびき発見伝その1『いいんじゃないの~?』
いびき発見伝その2『えぇい、ままよ!』

      

3.なにも睨まなくたっていいじゃないか!

ぎしっ、ガタン!

さびついた扉を開けて、閉め戻そうとしたと同時に扉は勢いよく勝手に閉まった。
きっと扉を治す金もないほど儲かっていないのだ、きっと。

思わず扉を蹴飛ばしたくなったが、暗い通路のすぐ先に蛍光灯が灯っていて、鳥獣販売店なる店があることがすぐに分かった。いかにもペットショップらしい獣の匂いがする。

蛍光灯の下には鳥籠やら餌の袋やらが雑念と置いてあるのが遠めからわかる。

本当に俺は何しにここに来たのだ?文鳥でも買って帰る気か?

もう考える頭を持たない私はその怪しい店内に入っていった。
入ってすぐ右側にカウンターがあり、そこに店主らしき人物が座って何か帳簿を付けている。その禿げ頭で小太りの初老の男と目が合った。いや、にらまれた。

「いらっしゃい」

耳に不快な脂ぎったダミ声で男は言った。頭部のサイドだけ毛が薄く生えて、額からてっぺんまでが見事に禿げあがったその店主は、いかにも狡猾そうでペットショップの店主というよりは意地悪そうな古書店の店主だった。古書店の店主が良くするように、客が万引きでもしないかと警戒するように、ジッと客である私を品定めしようと睨みつけてきた。

何も睨まなくたっていいじゃないか!別に万引きするわけでもなし。帳簿をつけるほど売れてるのかよこの店は!けっ!借金の自転車操業で首が回らないってか!こんな店とっとと出て行くべきだ!

間違えてBLコーナーに迷い込んでしまった時のあの素早さで、私は店を後にしようとして踵を返したとき、

「何かお探しで?」

首が肩までめり込んだような初老のその店主は、帳簿の手を止めて私に話しかけてきた。きっとめったに来ない客が迷い込んできたのをチャンスとばかりに呼び止めてきたのだ。その脂ぎった顔には不愛想な古書店の店主のそれではなく、来る者を拒まない「どうぞ見ていってください!お安くしますよ!」といった商いの媚びへつらう優しい顔つきがあった。口角はあがり、目じりは垂れ下がって、いかにもWELLCOME!な面持ちだった。来る者は拒まず去ろうとするものを否が応でも足止めしようとする、イルカの絵の販売員のそれであった。

「いえ、たまたま通りかかっただけでして」

突然に声を掛けられえてドギマギしてしまった私は、ついありきたりな定型文のような返事をしてしまった。こんな辺鄙なところにたまたまもチ〇ポコもあったものか!
こいつはカモれると思ったのか、店主は目をギラギラに輝かせて私を見つめてこう言った。

「いやあ、旦那は運がいいでさあ。今日は”たまたま”とっておきの『ブツ』が入りましてな。まだ誰にも見せていないんです。ぜひ見ていってくだせ~な!な~に、見るだけならタダですよ!そら、ご案内します。さあさあ!」

重々しい太腹を持ち上げてカウンターから立ち上がると、店主は私を奥に案内しようとした。私は慌てて店主を制止して、

「いや、本当に偶然”たまたま”興味本位で立ち寄っただけで、何も買う気なんてないので!」

と辞退しようとしたが、

「興味本位ならなお見てってくだせ~な!きっと気に入りまさ~な!へへへ!行っときますけど、旦那を見込んで言っとるんです。ここいらの連中はみんなクズですよ!酒飲みと博打打ちとチンカスの溜まり場でさあ。知性なんてあったもんじゃない。それに引き換え旦那は見るからに賢そうだし、顔も凛としていて、曲がったことは大嫌いって顔をしてなさる。そういう人にこそうちのペットをお迎えして頂きたいんです。いや、無理に押し付けようとしているんじゃないですよ!ちょっと見ってって欲しいんですよ。ね?その棚の裏におりますから、是非見てってくだせ~!さあさあ、その奥です!」

気づいたら私は店主に手を腰に回されて、促されるがままに奥へと押しやられていた。生暖かい感触が腰にじんわりと伝わり、それを避けたいから自然と前へと進んで行ってしまう。

「本当に大丈夫ですから」

と言っている間に目の前には、いくつもの箱がずらっと奥まで並ぶ空間が続いていた。40~90cm四方の箱が両サイド四段づつ積まれていて、思っていた店の面積からするとかなり奥行きがあり過ぎるようだった。その箱一つ一つには鳥や鼠などの小さな生き物や、子犬や猫やサル、熱帯魚に亀、イモリ、それらの天敵である蛇やトカゲなども入っており、狭い空間に幾種類もの生き物がひしめき合っていた。

「すごいでしょう。全部で100種類はいますかねえ。」

「うちはペット禁止なんです。本当結構なので、帰らせてください。」

「それは残念だ。じゃあ見ていくだけで結構ですんで、さあ、そのずっと奥におりまさあ~」

本当に見るだけで帰してくれるのか疑わしいが、この狭い空間で踵を返して引き返すのは難しそうだった。ひょっとしてこの戦法で何人もが高額なペットを買わされているのではなかろうか?そんな疑念が浮かびながらも店主に腰を押されるがままに前に進んで行く。その傍らでは犬や猫やサルたちが円らな瞳でこちらを見ていて「早くここから出してくれ!この古狸から僕たちを救ってくれ!」と言っているようだった。
やめてくれ、君たちを連れて帰る家はないんだよ!そんな目で見つめないでくれ!

「さあさあお客様、お初にお目にかかります!こちらが当店の一押し!!どうですか?可愛いでしょう?あ~もう旦那の事しか見ていないや!ガハハハハハ!!!」

      

       

        

         

         

その子を見たとたんに私の脳髄は蕩けるように幸福感のエンドルフィンを垂れ流し、私はボーっと見とれては、自然と顔が多幸感でニヤけていた。その子は私のことを見るなり、左手を掲げて『ニャンニャン♪』とした。私が呆気に取られていると「?」と小首を傾げた。私も同じように『ニャンニャン♪』と返した。その傍らで店主は後ろ手を組んで立ち、満足げな様子でこちらを眺めていた。

「こちら……この子は、人ですか?猫ですか?」

店主を見ずに目の前のラブリーヒューマンだかラブリーキャットか分からないその可愛さで100%出来ていそうな生き物を見つめながら、その生き物について質問をした。

「面白いでしょう!言っておきますが、人間では断じてございません!ここも治安は悪いが人身売買なんざやってません。うん、多分ね…。ここが開発される前には、そういうこともあったのかもしれやせんが、うちは当世風に言うとペットショップなんでね。まあ爺さんの代からやってますから、色んな生き物がいますがなあ。長いことやってると色々と珍しいもんにも巡り会いまさあな。う~ん、正直私にも分かりかねますが、仕草や気紛れなところはえらく猫っぽいし、尻尾や耳なんかはいかにも犬だ。そんでもって体や顔はヒューマンそのもので、瞳はエメラルドグリーンで髪はパツ金!欧米風ときてる!どこのルートかは分かりませんがウチんところに流れ着いたって訳ですよ。いや、さすがに旦那といえども出所は言えませんし、そもそも私も知りませんのでね。どうですか?私は目を見れば何でも分かるんだ!旦那!あなたは今この子を家に連れて帰ろうと思っている!いや、もうそうと決めていらっしゃる!そうでしょう!ねえ旦那!?」

オヤジの言う通り私はすっかりこの子を連れて帰る気でいた。家に連れて帰らないまでもどこかホテルにでもかくまって自分だけのものにしたかった。しかし、他人から真っ向から心を見透かされると人間腹が立つものだ。手前なんかに俺の気持なんか分かってたまるかという気になってくる。それもこんな初対面の脂ぎった小悪党なおやじに見抜かれてはどうしても反発してしまいたくなる。こいつと肩を抱き合って「良くぞ見抜いて下さいました!あなたは何でも分かって下さるんだ!もう今日から私たちは親友ですよ!」なんて死んでも出来るものか!

とはいったものの、私の可愛いそのエメラルドグリーンの瞳の持ち主は、潤んだ眼で私にこう言っているようだった。「ご主人様!気を確かに!こんな禿げ頭の挑発にのってはいけない!今は一刻も早くここを抜け出すのです!こんな古狸を騙すなんてご主人様の明晰な頭でなら朝飯前ですよ!さあ!早くここから連れ出して下さい!」

合点承知の助!今すぐ君をこの鳥獣販売店だか動物園だかよく分からない場所から助け出してみせるよ!

    

 つづく・・・

  

というわけでまだ続くようです(;´∀`)

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